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高森明勅
2018.4.4 22:00

「今上天皇」という語

『石原信雄回顧談』(全3巻、ぎょうせい)が刊行された。

竹下内閣から村山内閣まで7代の内閣で一貫して
(事務方の)
官房副長官を務めた石原氏は、現代史の稀有な生き証人。

その「回顧談」はとても貴重だ。

私も早速、入手した。

ところが、目次を眺めていると
第3巻の第4章の見出しに「平成天皇」
という語がある。

インタビュアー(上崎正則時事通信社総務局長)
この語を使っている(82頁)これは、天皇陛下が崩御(
ほうぎょ)
された“後”に「追号」
として奉られるはずの呼び名だ。

ちなみに「昭和天皇」との追号が奉られたのは
平成元年1月31日だった。

国民に当て嵌めれば、
死後に付けられる“戒名(かいみょう)”
のような性格のもの。

それを今の時点で、こともあろうに公刊物で使うなど、
甚だ非礼で不見識(
ご譲位後でも不可)。

意義ある出版物での誤りだけに残念だ。

以前も、ある刊行物で同じ間違いを見掛けた。

気が付いた時は必ず出版社に連絡して、
担当の編集者に直接、
穏やかに伝えている。

今の天皇陛下は、普通なら記事の中で
ただ「天皇陛下」とお呼びすれば良い。

文脈上、特に歴代天皇と区別するなどの必要がある場合は、
「今上(
きんじょう)陛下」とか「今上天皇」。

きちんとした出版社の編集者や通信社の幹部すら、
「今上」
という語を知らないのだろうか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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